将棋の終盤例(その3)

まず、前回の、E図とF図を再掲しましょう。E図:

F図:

前回は、

  • E図までの手順
  • E図から、11手(△8五銀▲9七玉△9五香▲8八玉△8七歩▲同玉△7六銀上▲8八玉△8七歩▲7九玉△7八金)でF図に至る手順

この2つを主に説明したのでした。

今回は、E図からのこの11手の読みに潜む危険と、より安全な手順を示します(予告では、△6九角の変化の話なども書くことになっていましたが、それは次回にします)。

さて、E図からの11手のどこが危険なのでしょうか? 前回に得られたことを整理しましょう。

  • E図から△8五銀▲9七玉△9五香に対して先手が▲8八玉と応じるならば、△8七歩で詰む
  • E図から△8五銀▲9七玉△9五香に対して先手が▲8七玉と応じるならば、▲8八玉の変化に比べて後手が得で、やはり詰む

これらは正しいのですが、実は、△9五香に対する先手の応手としては、▲8八玉と▲8七玉のほかに▲9六歩もあるのです。▲9六歩でも先手玉が詰むのか、全然チェックしていませんでした(G図)。

前回この合駒を考慮しないで済ませたのには、一応の理由がありました。「9六に後手の銀が利いているので合駒は意味が無い」と考えたからです。
もう少し詳しく書けば、「先手に合駒されたとしても、それを△同香と取れば、取った合駒の分だけ後手の得になる」ということです……が、実際に△同香▲8八玉△8七歩▲同玉△7六銀上と進めてみると、こうなります。

この局面の先手には、合駒しなかったときには無かった▲9六玉の選択肢が生じているのです。

こんなことになるはずではありませんでした。

というわけで、読み直しです。G図から読めば良いですね。G図を再掲します。

△同香▲8八玉△8七歩▲同玉の局面で、

△8六歩に▲8八玉なら△7八金で、▲7七玉なら△7六金▲8八玉△8七金▲7九玉△7八金で詰んでいます。後手の持ち駒に、歩が2枚も余りましたね。
……ということは、△9五香に先手が単に▲8八玉とする場合でもまったく同じことで、後手は△8七歩▲同玉△8六歩▲7七玉△7六金▲8八玉△8七金▲7九玉△7八金とできるわけです。最初からそうしておけば、捨て合の有無で2度も読まずに1度読むだけで良かったんですね(白々しく)。
結論は、「E図から△8五銀▲9七玉△9五香▲8八玉△8七歩▲同玉△8六歩▲7七玉△7六金▲8八玉△8七金▲7九玉△7八金の13手で詰み。△9五香に合駒は効かない」となります。

捨て合を読む

そもそも、E図からスマートに読むには、どうすればよかったのでしょうか? △8五銀▲9七玉△9五香までは問題ありませんでした。ここからの読みの方針は、

  • まず、「先手が捨て合すれば△同香と取る。捨て合が有っても無くても同じ手順」という最も単純な詰み筋のみを探します。先ほど書いた「E図から△8五銀▲9七玉△9五香▲8八玉△8七歩▲同玉△8六歩▲7七玉△7六金▲8八玉△8七金▲7九玉△7八金の13手で詰み。△9五香に合駒は効かない」が、まさにこれです。これは、先手が捨て合をしないで単に逃げるものと仮定して(つまり、後手の持ち駒は増えない)、それでも「後手は8五の銀を決して動かさない」という制約を付けて読むことになります。
  • もしも↑の方針で詰まなかったら*1、仕方がないので、先手が捨て合をする場合としない場合で分けて読みます。
    1. まず、先手が捨て合をせずに単に逃げた場合を、普通に制約無しで読みます。これが詰まなければ、捨て合を読む必要はありません。
    2. 単に逃げた場合が詰んだとしましょう。捨て合の場合を読まなければなりません。3択です。
      • 捨て合を△同香と取る。後手には「8五の銀を決して動かさない」という制約が付くが、持ち駒に歩が1枚増えているので、それでどうにかする。
      • 先手の捨て合を△同銀と取る。
      • 先手の捨て合を取らずに何かする。△8七金と捨てるとか。

あ、△同銀なら詰みますね。

次回予告

前回と今回、C図から△7六銀上で詰む、という話をしていたのでした。次回は、C図から△6九角でも詰む、という話を書きます。

*1:実際のE図は↑の方針で詰んだのですが、一般論として。