将棋の終盤例(その2)
前回は、△9六歩を▲同玉と取った場合に先手玉が詰むことを確認しました。
今回は、▲同金と取ります。
△8七金と捨てるのが筋です。こうすることで、先手玉が後手の2枚の銀に近づくのです。先手は▲同玉しかありません。これをC図としましょう。
それに対して、後手は、
- △7六銀引成
- △7六銀上
- △6九角
この3つがまともな選択肢です。結論を言ってしまうと、最初の選択肢は詰まず、残りの2つは詰みます。
私がこの局面を読むなら、おそらく*1、△6九角を少し読んで「たぶん詰まない」と判断し*2、次に△7六銀引成を読んで「これでは詰まないが△7六銀上でほぼ同じ手順を通って詰む」と考えて、△7六銀上を△7六銀引成に変更しても本当に同じ手順を通れるのかチェックし、ようやく正解にたどり着く、というところです。
今回はこの思考の過程を逐一追うことはしないで、正解の一方である△7六銀上で何が起こるのか、見てみます(△6九角の方が短手数なんですが、それは次回に見ます。)。
この局面で先手の選択肢は3通りです:
- ▲同銀
- ▲8六玉
- ▲9七玉
……このうち、▲同銀に対しては、後手は△同銀成とします。6七の地点が空くので、△6七龍の余地が生じて詰むのです。また、▲8六玉に対しては△7五角の1手詰め。
残る▲9七玉に対しては、△7九角と打ちます。
先手は8八に合駒するのですが、それが何でも取って取って、後手の持ち駒には銀と歩が1枚ずつはあります(先手が歩を合駒したものとして図を作ったので、この図では歩が2枚あります。)。これをD図としましょう。
この図で△8七銀と打てば、▲7九玉なら1手詰め。▲9七玉なら、9六の金を△9六銀成と王手ではがします。先手は▲同玉。持ち駒には金と歩が少なくとも1枚ずつ。これをE図としましょう。
ここまで来れば、あと一息、11手で詰みます。まず、持ち駒を節約して△8五銀と引きます。先手は▲8七玉か▲9七玉ですが、前者は△8六歩▲8八玉△8七金▲7九玉△7八金までの5手詰め*3。
△8五銀に先手が▲9七玉なら、△9五香。9六に後手の銀が利いているので合駒は意味が無い、ということにしておきましょう*4。先手は▲8七玉か▲8八玉ですが、▲8八玉から考えましょう。
うっかりここで△7八金と打つと、打ったばかりの金を取られるか、9五の香を取られるか、打歩詰めの反則負けかの三択に陥ってしまいます。そうではなく、△8七歩と打ち捨てて*5、▲同玉△7六銀上▲8八玉△8七歩▲7九玉△7八金。詰みました(F図)。
めでたしめでたし……というところで、今回はおしまい。長くなってしまいました。
次回予告
「めでたしめでたし」と書きましたが、実は、E図からF図に至る手順は、脇が甘い手順なのです。最終の5手には、しっかりした代替案*6があります。どこが甘いのか、代替案は何か、次回に説明します。今回の脚注で触れた「制約」の話です。
C図からのほかの2つの選択肢の話も、次回です。