『Bridge for Ambitious Players』のdeal 8が難しい件について・続き

前回までのあらすじ:
North:
: 9 7 5 3
: A 8 5 4
: A 9
: A Q 2
South:
: A K 2
: K J
: K Q 6
: K J 5 4 3
この手でSouthが6NTに挑戦したら、

  1. WestにQを出されたので、Southで勝って、
  2. の低位を出してみたら、Westがを持っていない(∴Southの長いと同枚数をEastが持っている)ことが判明した

このままだと、11 tricksしか取れずに失敗する。Jのfinesseよりも確実な方法があるだろうか?


Reese先生の答えは*1、「この後にを負けておいて、次の手でSouthの手番になるようにする」です。
North:
: 9
: A 8 5
: --
: --

South:
: --
: K J
: Q
: 5

この手でSouthからQを出せば、いわゆるdouble squeezeで成功します。『Bridge for Ambitious Players』は、そのことを、WestとEastの実際の手札も参照しながら示すのですが、私の関心は「Southがどのようにこのdouble squeezeを思いつくのか」、あるいは、「私がSouthだったらどのようにdouble squeezeを思いつけば良いのか」と言うところにありますから、WestとEastの実際の手札にあまり言及するのは、かえって不都合です。WestとEastの手札はもしも必要でしたらd:id:Koba-L:20120307を参照していただくということにして、ここでは見ない振りをして話を進めましょう。

まず、2nd trick終了時点での、4つのsuitsの置かれている状況を確認しておきましょう。
North:
: 9 7 5
: A 8 5 4
: A 9
: Q 2
South:
: A 2
: K J
: K Q 6
: K J 5 4
: 残り9枚。NorthとWest(たぶん)が長い。最強のカードはSouthが持っているが、2番目3番目に強いカードはたぶんWestが持っている。現時点ではNorth-Southが確実に取れるのは1回
: 残り13枚。Northの4枚のほか、WestかEastが4枚以上持っている。NorthとSouthがそれぞれAとKを持っている。SouthのJはtenace
: 残り12枚(trickでWestが捨てたと仮定して)。NorthとSouth合わせて5枚しかないが、AKQで3回勝てる
: 残り10枚。SouthとEastが4枚ずつ、Northが2枚。上から3回はNorthとSouth。4枚目である10をEastが持っている

このうち、について。この時点で、「このままではの最終トリックは取れない」という事実に付随して、「もしEastが1枚でも、Southがを捨てるよりも先に、を捨てるなら、Southはで1 trick稼いで、6NTが達成される」ということもわかります。
次に、Northが4枚持っているについては、おそらくWestが4枚以上持っていて、と同様の状況でしょう(より悪いことに、WestはJと10を持っているはずです)。Westは、をちょうど4枚持っているなら、Northがを捨てるよりも先には、を捨てることができません*2
このように、WestとEastはそれぞれ、その左隣であるNorthとSouthの手札によって、捨て札を制限されています。これは、North-Southにとって、良いことです(左隣の手札によって制限されているということは、この時間差を左隣の(直後の)プレイヤーに利用されうるということです)。例えば、Northは、Westがを捨てなかったのを見てから、を捨てることができます。も同様です。これを利用できるでしょうか?
Westはを持っていないので、が出されるたびに何か捨てなければなりません。余分の(もしあれば)、余分の(もしあれば)、 (WestにはSouthのKQが見えていませんけれども)を捨てることができます。Eastの手も、が入れ替わりますが、同様です*3。では、North-Southがを最後の1枚だけ残して連打した後にを出してWest-Eastが捨てるものに困る、という計画はどうでしょうか。
最初の2 tricksはでした。は先に負けておくことにします。Westが勝つでしょう。Westが何を出しても(たぶんでしょう*4)、NorthかSouthで勝てます。ここから連打します。最後のをSouthが出す直前までに、

  • で3 tricks
  • で2 tricks
  • で4 tricks

の9 tricksがあって、全員4枚しか残っていません。Westは、が1枚とですが、が残っていても何の役にも立ちませんから、が3枚と想定するべきです。Eastは同様にが1枚とが3枚と想定しましょう。今、Southが最後のを出しました。Westはを捨てます。これを見て、Northがを捨てます。すると、Eastが捨てるものに困ります。は残さなければなりませんが、の3枚目が無いと、Northのの3枚目が勝ってしまいます。
このプランで、North-Southは確実に12 tricks取ることが出来ます。

――というのが、double squeezeです。これがNTに必要な技術のようです。むう。

*1:その書きぶりやほかの本などから考えて、ある水準以上のブリッジプレイヤー共通の答えのようですけど

*2:5枚持っているなら、1枚は自由に捨てることができますが、2枚目はやはりNorthに先行しては捨てられません

*3:Eastには「余分の」などというものはありませんから、状況はより単純です

*4:このときにWestがを出してくれたら非常に楽ですが、そうはならないでしょう