夏期限定トロピカルパフェ事件

随分とご無沙汰していましたが、以前の続きを書きます。

以下、『春期限定いちごタルト事件』と『夏期限定トロピカルパフェ事件』の結末などに触れます。
本来のキャラクターから離れて小市民になろうと思っている小鳩君と小山内さんは、この目標のための互恵関係*1にあったのですが、結局はずるずると二人とも元に戻りそう、というところで『春期限定いちごタルト事件』は終わりました。互恵関係では二人の業の深さに勝てないのです。

しかし、『夏期限定トロピカルパフェ事件』は小鳩君(と小山内さん)が改善策を見つけられないまま進み、小山内さん拉致事件発生までは、自称互恵関係の二人が仲良く夏休みを過ごしつつ、小鳩君が坂を転げ落ちるように本来の名探偵キャラクターに戻って行く様子が詳しく描写されます。しかも、視点人物であるところの小鳩君はこれらのことに無自覚ですから、読者は主人公小鳩君の浮かれた気分を享受しつつも視点人物小鳩君の浅はかさを嘲笑うことで客観的になれます。

そして、拉致事件の興奮が過ぎ、最後には小山内さんの指摘によって小鳩君も浅はかさを認識して物語は終わり。

ラストに謎が解かれて読者が喪失感を味わっている時に主人公も何らかの理由で喪失感を味わっている、というのは珍しくないことですが、このたたみかける感じが素晴らしい。良い青春小説を読んだなあ、春夏と続いたから秋冬もあるのかもしれないし、小山内さんが暗黒面に落ちたお蔭で小鳩君は助かる機会を得たのだから小鳩君が幸せに暮らすシーンが無いと小山内さんは浮かばれないかもね、それでも蛇足感が漂うなあ……と読後しばらくは思っていたのです。
つまり私にとってこの物語は、いろいろ曖昧にしていた小鳩君が失敗して自分のキャラクターと正面から向き合うようになる過程を描いたもの、でした。

ところがid:poetria氏によると、小鳩君と小山内さんの恋愛小説として読むのが普通なのだそうです。
確かに小山内さんとの仲睦まじいシーンと小鳩君の浮ついた気分は心地良かったし、シャルロットが一番楽しかったのは確かです。でも、ここまで通してみた時に、小鳩君の今後の心境はすごく気になるけど、小山内さんとの関係はそれほどでもないのです。二人には幸せになってほしいけど、ばらばらでも良いんじゃないでしょうか。

追記

うまく書けませんでした。もう一度書くかも。

*1:恋愛関係だったら悩むこと無く小市民になれてしまうところなのに。